注意:下单成功一律不能取消!
それはフロントホイールだった。
後ろはない。前だけがある。
マヴィック製。ハブはShimano RX100。
クイックレバー付き。ヴィンテージ。
説明はそれだけだった。
誰も買わなかった。
値段を下げても、反応はない。
「いいね」はつくが、それだけだ。
ある夜、Mは試しに回してみた。
音がしない。
いつまでも回り続ける。
気味が悪くなって止めようとしたが、
手を離したあとも、わずかに回っているように見えた。
翌日、商品ページを確認する。
写真のホイールが、少しだけ角度を変えている気がした。
気のせいだと思った。
さらに数日。
説明文の最後に、一行増えていた。
――「まだあります」
Mはそんなことを書いた覚えがない。
削除した。
だが翌日には、また同じ一文が戻っていた。
――「まだあります」
誰も買わない。
なのに、消えない。
Mはついにページを閉じた。
数日後、別の出品が現れた。
写真は同じ。
説明も同じ。
ただ一行だけ、違っていた。
――「まだあります。あなたの前に」