橘図の縁金です。橘（たちばな）は日本固有の柑橘で、古来より不老長寿や繁栄を象徴する吉祥の植物として尊ばれてきました。特に常緑の姿から「永遠の命」を意味づけられ、宮中の正殿・紫宸殿の前庭には左近の桜、右近の橘として植えられたことでも知られます。刀装具における橘の文様は、単なる植物表現にとどまらず、武士の家の繁栄や末永い家運を願う意匠として好まれました。

江戸時代には橘文は格式を表す意匠の一つでもあり、金工師たちによって鉄地に精緻に彫り込まれ、その艶やかな葉姿や実の丸みが装飾性を高めています。本品も時代の古色を帯びながら、橘の持つ象徴性をしっかりと伝えており、装剣具の中に息づく文化的背景を感じさせます。

縁金という刀装具の部位は、柄と刀身の境を飾り守る重要な部分であり、その意匠は持ち主の思想や祈りを映すものといえるでしょう。橘が刻まれたこの一品には、末永い繁栄を託した武士の願いが込められていたのかもしれません。

金色の花と枝の装飾が施された金属製バングル。

- デザイン: 金色の花と枝の装飾が施されたバングル
- 素材: 金属製象嵌
- 状態: 経年による風合いがある

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横3.6×縦2×厚0.8　8g

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