【島鉄切符図録】岸本貴志 著 2020年 三東工廠◎島原鉄道・口之津鉄道・温泉鉄道

長崎県の私鉄、島原鉄道線で実際に発行された、膨大な数の切符を系統立てて網羅・解説した、鉄道切符収集家（券売マニア）垂涎の専門図録です。本書は2020年に発行された「第2版」であり、最新の情報までがフォローされています。

島原鉄道は、長崎県を代表する私鉄でありながら、多くのローカル線の要素を持つ魅力的な路線です。この図録の最大の魅力は、硬券、軟券、準常備券、補充券、急行券、回数券といった多種多様な切符を、昭和初期の貴重なものから令和の時代まで、発行年代、券種、地紋色別に詳細に分類し、図版とともに解説している点にあります。

特にマニアの心をくすぐるポイントは以下の通りです。
* 廃止私鉄の切符：現在の島原鉄道線に統合された、口之津鉄道や温泉鉄道といった、今では資料自体が稀少な路線の切符も網羅。これらの路線の切符は、その存在自体が歴史を物語る極めてレアなアイテムです。
* 年代ごとの変遷：戦前の「〜三等級制時代」の切符から、国鉄（JR）との連絡運輸券、さらに加津佐海水浴場や島原観光ホテルといった当時の観光施設との提携切符まで、切符の変遷を通じて島原鉄道の歴史と地域の変化が追体験できます。
* 準常備券・補充券：通常は出回りにくい、窓口の係員が手書きで使用した軟券・硬券の準常備券や補充券も多数掲載されており、切符の裏側にある「乗車券の奥深さ」を知ることができます。

切符図鑑というだけでなく、鉄道会社の歴史的資料としての価値も非常に高い一冊です。長崎の鉄道史や、失われた私鉄線に興味を持つ鉄道愛好家にとっては、欠かせない一次資料となるでしょう。

2020年4月 岸本貴志/三東工廠 A4版 120ページ

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