この作品は、受験を控えた受験生の頭の中をそのまま可視化したものである。画面全体に描かれた渦巻きや歪んだ人物、意味を持つようで持たない形は、勉強を続ける中で蓄積されていく不安、焦り、疲労、そして情報過多によって混乱した思考を表している。受験生は常に「考えること」を求められ、正解を出すこと、間違えないこと、時間内に終わらせることを意識し続けなければならない。その結果、頭の中では思考が整理されるどころか、むしろ渦を巻くように絡まり合っていく。

絵の中に登場する笑顔のような表情や、どこか間の抜けた形は、表面上は平然と勉強しているように見える受験生の姿を示している。しかしその奥では、不安や恐怖、自己否定の感情が別の形となって現れ、静かに存在感を主張している。明るさと不気味さが同時に描かれているのは、受験生活が単なる苦しさだけでなく、慣れや諦め、時には投げやりな感情も含んでいるからである。

また、全体的に線が重なり、空白が少ない構成にしたのは、受験生の生活に「何も考えない時間」がほとんど存在しないことを表現するためである。常に何かに追われ、次の課題や次の試験を意識し続ける状態は、心を休ませる余地を奪っていく。その息苦しさを、画面いっぱいに広がるモチーフで表した。

この作品は、受験生の苦しさをただ訴えるためのものではない。混乱しながらも考え続け、押しつぶされそうになりながらも前に進もうとする受験生の姿そのものを描いている。正解のある問題に向き合いながら、正解のない不安と戦う受験生の内面を、この絵は象徴している。